No.33 プラ注射器で水を沸かそう 2005.2.8.掲載

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水を加熱するなら、100℃になると沸騰します。ただ、これは標準大気圧での話しです。これより圧力が高ければ、100℃でも沸騰しません。逆に圧力が低ければ、100℃より低温でも沸騰が起こります。簡単な道具で減圧して、水を室温で沸騰させましょう。

使用する道具

使い捨て注射器 5ml用  :ポリプロピレン製、教材用、1本50円ていど、日曜大工店でもアクリル接着用などとして売っている場合があります。

ゴム管 :合成ゴム製「つり浮き」用ゴム管など、注射器の先にきつくはめられれば良い。

クリップ :「バインダークリップ」というのか。写真の形のもの。

 

水を室温で沸騰させる実験

@ゴム管を2〜3cmに切り、注射器にはめます。

A注射器の先から水をピストンで吸います。ゴム管から2mlくらいの目盛りまで入れましょう。

B注射器の先を上に向けて、注射器をコンコンと指ではじいて気泡(空気)を取ります。ピストンを約1ml目盛りくらいまで押し、ゴム管の先から水をあふれさせます。

Cそのまま、クリップでゴム管をはさんで、密閉します。

D力を入れて3ml目盛りくらいピストンを引っぱると、注射器の中に空間が出来て、水がブクブクと沸きます!!


大気圧


引っぱって低圧

 Eパッとピストンをはなすと、ピストンは勝手にスッと元の位置にもどります。空間も気泡もなくなり、水が満たされている元の状態に戻ります。さっきの空間やブクブクは空気ではなかったことがわかります。

圧力を下げれば沸騰(気化)、圧力を上げれば凝縮(液化)する。

水を入れずに、乾いた状態で、ピストンを引っぱろうとすると、より大きな力が必要です。大気圧は約100kPa=10N毎平方センチメートル です。これは1平方センチあたり約1kg重 の圧力です。この大気の圧力が真空をつぶそうとするためです。したがって、大きな注射器ではピストンの断面積に比例してより強い力が必要です。

空間には水蒸気(水の気体)があるわけですね。引っぱったままでも、沸騰はやがて止んでしまいます。沸騰によって水蒸気が空間に充満して、やがて圧力が回復するからです。(下の蒸気圧グラフの圧力まで回復する。) ポンプなどでどんどん水蒸気を排出すれば、沸騰しつづけるでしょう。→No.32気体液体クーラ実験

水のかわりにアルコールを入れて行うことも出来ます。アルコールでは水より楽に沸騰します。同じ温度でもアルコールと水では蒸気圧(ブクッと気体の泡が膨らむ圧力)に違いがあるからです。

次のグラフは水(またはエタノール)の蒸気圧です。大気圧は約100kPa (キロパスカル)です。圧力がこのグラフの値より下がれば、沸騰します。たとえば、水の温度が20℃なら2kPaくらいに減圧すれば沸騰が起こるわけです。

水とエタノールの蒸気圧曲線

室温ていどのくわしいグラフ

 

 

ライターガスで    この実験は可燃性ガスが漏れるため、危険なので、子供がやってはいけません。

現在発売されている「ノンフロン冷蔵庫」には冷媒ガスとしてイソブタンが使われています。イソブタンのかわりにライターガス(ブタン)の液化・気化をやってみます。

ゴム管でなく、シリコン栓に千枚通しで細い穴を突き通したものを使います。穴は見た目は閉じています。一方に注射器の先、もう一方にライターガスのノズルを差し込ます。ノズルは押すと内部の弁が開いてガスが出るので、注意して下さい。ライターガスはノズルが下向きになるように持ちます。

@片手でピストンが飛び出さないように押さえて、ライターガスを少しづつ押し付けます。

  ★ブタンの蒸気圧は10℃では150kPaていど、20℃では200kPaていどらしいので、ピストンが押し出される力は大きいので注意して下さい。

A液が注射筒の中に0.5mlくらい出たら止めて、ノズルを抜きます。ノズルを抜いたシリコン栓の穴を指で押さえます。(押さえるまでに、多少穴から漏れても注射器内に液がいくらか残ればOK、漏れると温度が下がるのでピストンが押される力が弱くなるのでやりやすくなります。)

ライターガスの気化・液化

B力をゆるめると、ピストンが押し出され、ブタンの液体が沸騰します。ピストンを押すと、注射筒の内側ににじむように液が現れ、つまり液化するのを観察できます。

きっと沸騰のときは吸熱、液化のときは発熱しているはずです。

 


押して高圧→液化


力をゆるめて低圧→気化

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