No.32 気化クーラの実験 2005.2.2.掲載

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手にアルコールをつけて、ふうふう風を当てるとすごく冷たいですね。これはアルコール液体が気体になるための熱、気化熱が手から奪われるからです。

風を当てる以外に蒸発を促進する方法としては、圧力を小さくするという方法もあります。

圧力を下げて気化させる

右図のように試験管にアルコール(メタノール)を5mlほど入れ、真空ポンプをつないで圧力を下げると、アルコールはブクブク激しく沸騰し始めます。試験管はどんどん冷たくなって行きます。

やがて、沸騰はおとなしくなり、10秒おきくらいにときどき沸くていどになります。

試験管の表面には水滴がついて白っぽくなりました。

 

こんなに冷たくなる

温度形のセンサ(熱電対)を試験管の外側に貼り付けて温度の変化の記録してみました。

17℃でスタートした温度は2〜3分間後にはマイナス10℃に達しました。さわると、すごく冷たい。

メタノールを水道水に替えてやってみました。水でも2〜3分間で、17℃から3℃に下がりました。これもすごく冷たい。

 

使った真空ポンプの出口からはアルコールの蒸気が排出されているはずです。真空ポンプの排気口にゴム栓つきガラス管を取り付けておくと、上の写真のようにガラス管の内側に結露が見られました。これをもとの試験管にもどせば循環使用することができますね。*1

冷蔵庫やエアコンでは?

家庭や自動車のエアコンの内部では上と同じことが行われています。冷媒としてはアルコールでなく代替フロン(常温大気圧では気体)が使われています。

冷媒ガスをポンプで圧縮して高圧にします。
気体が液体になるとき発熱(凝縮熱)します。

その熱を空気中に放熱します。

次にノズルから低圧空間に霧状に噴出させます。
気化と同時に気化熱のため冷たくなります。

そのガスが外界から熱を奪います。

 

こまったところ

自動車や家庭、冷蔵庫などのコンプレッサー式のエアコンの冷媒ガスとして、以前は「特定フロン」と呼ばれるガスが使われていました。簡単に凝縮するので小さな圧縮ポンプで高性能なヒートポンプが出来ました。その後、オゾン層破壊力の強い特定フロンの使用を禁止し、そのかわりに「代替フロン」が使われ始めました。特定フロンに比べて性能は悪いのですが、仕方ありません。

ところが、その後「代替フロン」は温室効果の力が強いガスだともわかり、イソブタン(可燃性ガス)を使用した「ノンフロン」冷蔵庫が現れました。しかし、これで解決ではありません。可燃性ガスなので量は少なくします。その分、圧縮ポンプが苦労すると電気を多く使うので、電気を作る時の発電所でのCO2排出増加も計算に入れなければなりません。

このように、地球環境を考えると、気体液体式のヒートポンプは実は悩ましい問題をかかえているのです。

おまけ情報

*1 油式真空ポンプは内部に多量の油を持っており、メタノールの大部分はこの油に吸収されたり、容器内に付着してしまうと考えられます。したがって、ガラス管に結露するメタノールはごくわずかです。 
 冷媒を完全に循環させる実験として、No.36 気液ヒートポンプ・サイクル を開発しました。(2005.8.14)

 

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