No.70 地球こま フライホィール蓄電 2020.12月.掲載
おもしろ実験メニュ

  

はずみ車にエネルギーを蓄める

   自動車の回生ブレーキは従来なら摩擦熱にして捨ててしまっていた運動エネルギーを発電に使って、充電池に蓄えることで、再利用するようにした仕組みです。都内の電車のように多数の電車が架線で結ばれている地域では、回生ブレーキで得られた電力が、即座に他の電車の加速に利用されていますが、自動車ではそれができないので、蓄電池が必要になります。
 充電池の代りにコマのように回るフライホィールを回転させることで運動ネルギーとして蓄えることもできます。そのような装置を備えたバスが一時期欧州で走っていたそうです。その後、F1カーに搭載された装置もあります。電力をフライホィールの回転として蓄える蓄電器はフライホィール蓄電器(flywheel-battery)と呼ばれます。
 現在、日本で稼働しているものとしては、京浜急行電鉄の逗子フライホイールポスト(逗子市池子1丁目1)という施設があります。ここの蓄電装置を利用して、逗子線で使われる電力の18%程度を再利用しているそうです。多数の電車路線を持たない地域の私鉄では、このような蓄電施設が有効なのです。

再生可能エネルギー利用に有効

  フライホィール蓄電装置は急速な充放電が可能で、エネルギー変換効率が良く、耐久性についても有利なことから、風力や太陽光など、天候まかせで不安定な再生可能エネルギーによる電力源と組み合わせることが期待されています。
 それを想定して、新世代のフライホィール技術の開発が進んでいます。右は、JRが開発している超電導磁気軸受を用いたフライホイール蓄電システムで、100kWhの電力量を蓄えることができます。
   空気抵抗が発生しない真空容器の中で、直径2m質量4トンの炭素繊維強化プラスチック製フライホィールを高速回転させて大きなエネルギーを蓄えます。回転軸を超電導磁石で浮かす方式がこの装置のミソです。

ブラシレス・コアレスが理想

 外部からフライホィールへエネルギーの出し入れを行うモーター兼用の発電機もロスの少ないものが必要です。現在の電気自動車等のモーターはブラシによる摩擦が発生しないブラシレスモーターが採用されています。しかし、コイルには鉄の芯を使っているため、鉄の交代磁化に伴う鉄損(熱を発するロス)があります。
  さらなる高効率化のためには、鉄芯を用いない(コアレス式)のモーターが求められます。フライホィール装置では、回転が非常に速いので、ブラシレス・コアレス化は必須です。JRの装置では、現段階の現物はまだそうなっていないようですが、発表論文を見ると、その方向で開発を進めていると思われます。


 ブラシレス・コアレス・モーター発電機

 私たちは、模型で実験です。以前に開発したコアレス発電機(「10円玉の重みで発電」を改造した教材が右の写真です。少しヤワなため、回転が上がるとべニア板が変形して、わずかに接触しがちで変な音がするポンコツですが、立派なブラシレス・コアレスのモーター発電機です。ローターに回転トルクが加わるのは1回転に一瞬×2回だけなので、まるでエンジンが低速回転しているかのような音がします。

 Youtube動画をごらん下さい。
     https://youtu.be/k1V29EPdJck

 1
 逗子フライホィールポスト

最新フライホィール研究
出典:JR(公)鉄道総合技術研究所HP

ロータステータ

出典:「フライホイール駆動用永久磁石同期電動機の開発」、鉄道総研報告 2013年7月号、pp.35-40 (2013)
https://www.rtri.or.jp/rd/division/rd79/rd7920/rd79200107.html

コアレスモーター発電機

この模型の構造
  2枚の木製円盤がロータであり、フライホィールでもあります。ロータにたくさん穴が開いているのは、かつて多数の磁石を埋め込む野望があった跡で、現在は意味のない穴です。180°の位置2か所に磁石が嵌めらています。
 1か所に合計4つのネオジム磁石が2個ずつ向い合せに置かれ、鉄板と磁石によって、磁力線がほとんど漏れない、ほぼ閉じた磁気回路になっています。その結果、磁石間のすきまには、強い磁場が生じています。
 一方、回転中に動かないステータ部分としては、空芯のコイルが左右に一つずつあって、これがロータの2枚の円盤のすきまに差し込まれています。コイルはローターに接触しないサイズであり、厚みが3mm、直径0.2mmのホルマル線を600回ほど巻いたものです。このコイルを磁石部分の部分が通過すると、コイルにパルス状の起電力が誘導されます。(右下の波形)

磁石  ステータコイル


 

動作のしくみ

  2つのコイルの一方は発電用であり、位置センサーを兼ねています。コイルに発生する電圧のパルスが、トランジスタのゲートにかかる時、もう一方のコイルに電源からの電圧がかかります。ちょうどその時に磁石部分が通過するので、トルクが発生してフライホィールの回転速度は上がります。これが蓄電です。
 電源を切ると、フライホイールに蓄えられた運動ネルギーを消費しながら、しばらくの間LEDが点灯します。これが放電です。
 

パルス
実測した発電パルスの波形
 回路図 
     

もう少しフライホイールの慣性モーメントを増やせば、蓄えられるエネルギー量が増えるでしょう。
また、ちゃんと充電ボタン、放電ボタンをつけた方が
充・放電が分かりやすいですね以上の点を直して、再掲載します。

 

 

 

おもしろ実験メニュ

分類順メニュへもどる