No.65

LTDcar140
  お湯で走る

  揺動スターリングカー

2018.1月掲載

おもしろ 実験メニュ    分類 順メニュへ

LTDSECD-car

容器が揺れて 進む

 高温側(前)のポケットに少量のお湯を注ぐと、タッ パー容 器がゆっくり前後に揺れ、その運 動によって、ワンウェイ車輪を前後に往復させ、車体を前進させます。前進速度は4cm/sていどです。
 機械加工を使わずに製作できる設計にしました。ガラス注射器を加工せずそのまま使っています。タッパーを挟む2枚の アルミ板は、接着せずに、ゴム風船をパッキンにして、輪ゴムで取り付けられています。

   動画(you-tube)

anime300

 方式としてはディスプレーサ衝突式スターリングエンジ ン(SECD:2001小 林) を揺動式にしたものです。注射器のサイドスラストを減らすため、L形のリンク板を使って注射器を垂直置きにしました。 

動作の説明

 内部の発泡スチロールは容器に対してゆるゆるで、空気が 通れる隙間があります。空気を左右 に移動させる役割があり、ディスプレーサと呼ばれます。容器の傾きによってディスプレーサが右に移動すると、内部の空気が容器内で左方の高温 側に 流れ、加熱されるので内部圧力は高まります。圧力によって注射器が伸びて容器が左に傾きます。それによってディスプレーサは左に移動し、内部 空気が右方の低温側に流れ、冷却されます。内部圧力が下がって注射器が引き込まれるので、容器は右に傾きます。この過程が繰り返し起こりま す。このように、密閉された気体が加熱→膨張→冷却→圧縮 のサイクルを繰り返されるのがスターリングエンジンです。

お湯熱源

 スターリングエンジンは小さな温度差、たとえば体温と気温の温度差 10〜20℃を利用して動くものも出来 ます。  しかし、回るけれども力が弱く、動力として使うのは難しいのです。 そもそも、熱機関が熱を仕事に変換できる割合、熱効率はどんな理想的な熱機関であっても、 1-(低温側絶体温度÷高温側絶体温度) 以下だと知られています。 つまり限りなく温度の差が小さいと、そこから取り出せる仕事の割合は限りなく小さくなります。お湯と室温の差は数十℃ですが、数百℃の差があるバーナー炎を使うエンジンに 比べ ると、たいへん不利な条件なのです。

ディスプレーサ容器

 大きさ11cmていどのPP(ポリプロピレン)のタッパー容器を使いました。底の部 分を数ミリはば残して、熱したカッター刃などで切り取 り、 紙ヤスリで底を平面状に整形します。
  気密のためのパッキンはゴム風船を使いましたが、ゴムの薄板でも良いです。シリコン系の接着剤でも良いですが、剥がれやすいので、その 場合でもやはり輪ゴムなどで圧着して置く方が安心です。針金で図のようなゴム掛けを作成して輪ゴムを掛ければ十分に気密が保てます。ただし1 本の輪ゴムは4重か 5重にして強く掛けます。 容器には、注射器につながるパイプと空気量調節用のパイプを取りつけます。空気調節用には小さな穴にビニールテープを貼るだけでもできますが、 貼ったり剥がしたりに手間取ります。

 ディスプレーサは容器の傾きに応じて
運動するので、容器内壁と摩擦しないようにします。また、擦れなくとも容器との隙間が狭すぎると流動抵 抗のためディスプレーサの動きが悪くなります。 逆に、隙間が広すぎると、高温と低温の空気が混ざり合ってしまうので、加熱冷却が浅くなり、力が出ません。  
 発泡スチロールは軽いため、小さな流動抵抗に運動を妨げられるので、上端に小さな木ねじを数本打ち込んで慣性を与えています。
 まずは、なるべく隙間を少なく整形してから、実際に容器内に置いて、容器を傾けた時にある程度素早く反応するように修正して行くのが良いで しょう。

 ディスプレーサのアルミ板に接触する面にアルミホイルを貼ると、加熱冷却を助ける効果があると思います。(熱伝達の補助)
 また、摩擦にならない範囲で、隙間にスチールウールを置くと、素早い加熱冷却と断熱、熱の再利用の効果があります。(熱再生器)

   case   plate etc
baloon
 
displacer and case

  displacer

組み立て・調整

 注射器の容積変化は4mLていどなので、それに合わせて、リンク板の寸法を決めて下 さい。容器が左に30〜40°まで傾くとしてストッ パーの位置を決めます。そして、右に30°〜40°傾いた時注射器ピストンが筒端に当たるようにチューブを支持する針金の位置を調整します。
 加熱側ポケットに入れる湯の重さも考えて、容器の重量のバランスを取ります。輪ゴム留め用の針金にダブルクリップをつけたりして調節す すれば良いでしょう。お湯を入れた直後は容器内部の平均温度が上がってバランスが変化するので、それも考慮します。

組み立て

star 写真の車では、車輪として、ボールベアリングの入っているミニ四駆用ガイドローラーを使いました。 エンジンの力は弱いので、摩擦力が小さくないと前進できないからです。
star 前進させるために ミニ四駆用ワンウェイタイヤを使っています。 この部品は荷重が大きい時摩擦力が大きくなるので、車体の重量を支えるのには使わず、 荷重を小さくしました。 滑ってしまう場合はクリップなどの重りをのせます。
star 少しでも上り坂になると、車体が前後に動くだけで前進できなくなります。車体側にもワンウェイタイヤを置けば、ごくごくゆるい斜面なら登ることが出 来ます

Rear1waytire

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