Stirling Engine with Colliding Displacer (SECD)

衝突ディスプレーサ式スターリングエンジン

出力ピストンやディスプレーサ等をクランク機構などで結ばず、気体バネ等を 利用して振動させる方式のスターリングエンジンはフリーピストン式と呼ばれます。ここで提案するSECDはフリーピストン式の新型の 一種ですが、設計・調整が極めて容易であり、かつ従来型にない便利な特徴を持っています。

ビー ル式フリーピストンについて

小林式フリーピストン SECD誕生

さまざまな模型

 ブルブル君 ‥ マイクロサイズSECD

 

 

 

 

 

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ビー ル式フリーピストン  -1969

フリーピストン形といえば W.Beale氏が考案 したこの形式です。

 バネAとBは、実際のバネまたは空気バネ、または 両方が使われます。
 出力ピストンが振動すると、出力ピストンの上下の圧力差によって、ディスプレーサピストンを 上下に揺り動かします。

出力ピストンとディスプレーサピストン、2つの振動 体があるので、それぞれの固有振動数を一致させる必要があります。動力になるような模型は設計が難しい。負荷の変化に弱いのも弱点。

 

 

  

AnimationGIF

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小 林式フリーピストン SECD 2000-2001 

出力ピストンのピストン側を固定し、シリンダ側を振動させます。シリンダが振動する と、スチールウールは上下でシリンダに衝突するので、往復運動します。つまりシリンダとの衝突 がディスプレーサ振動を励起する方式です。(特許出願2001-401743

振動数は主にシリンダの質量と空気バネのバネ定数できまりますが、負荷の変化など外 的な要素の影響を受けます。ビール式ではそれによってディスプレーサピストンの固有振動数と大きくズレが生じると止まってしまいます。

SECDの場合、負荷の変化等で振動の速さが変わっても、ディスプレーサ振動は必ず それに同期します。振動数を大幅に変化させても、振動が止まらないということが利点です。

また、シリンダ端に繰り返し接触するので、熱伝達に有利です。

試験管のおしりを熱し、シリンダをつりあいの位置からズラして手を離すか、試験管を 弾いて初動を与えると、シリンダが振動を始めます。

SECDの動作

1〜2 気体が収縮してシリンダが上へ
2〜3 シリンダは止まるがスチールウールが慣性で上へ
3〜4 気体が膨張してシリンダが下へ
4〜1 シリンダは止まるがスチールウールが慣性で下へ

SECDのジャンピング動作

もしピストンの一端を固定しないと、エンジンは垂直にジャンプすることができます。

@〜A加熱
A〜B膨張
B〜C冷却
C〜D圧縮
D〜@落下

振動アームに取りつけられたバネなどによってシリンダが鉛直下向きに床に押し付けら れる場合には、ディスプレーサ下部のばねが無くても動作します。

このエンジンはヒートポンプに応用することが考えられます。任意の振動数でシリンダを 揺すぶることでヒートポンプになります。家庭用エアコンなどで必要となるリニアな出力制御などが簡単に実現できるスターリングエンジンと言えま す。

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さ まざまな模型 2001-2002       Models using SECD

羽ばたき飛行船
 Airship with flapping wings  2001

出来れば振動のまま出力を取り出したい。右は振動出力で小さな翼を羽ばたくようにし たもので、ヘリウム入りマイラー風船に取りつけました。シリンダには3ml注射器と直径13mm試験管を使っています。
飛行船全体 Click for full shot of the airship
 試験管のおしりをバーナーで加熱し、余熱で1分ていど羽ばたきます。100リットル弱の飛行船を引っぱり30cm/s程度の速さで 前進します。熱源を積めば羽ばたき続けますが、燃料がなくなる分、少しずつ飛行船が軽くなるので、上へ上へそして永遠にサヨナラ(^^


振動ブラシカー
  Brush-car    2001

 これも振動を直接利用しました。フリーピストン形を固定したフレームの真下にブラ シ(洗濯用ブラシ)が取り付けてあります。ブラシの毛は斜めに床に当たるようにしてあります。振動1回の度にごくわずかづつ前進します。

 この車は土浦工業高理科研究部の3年生が作り、第5回スターリングテクノラリーで は圧倒的支持を得て、特別賞金賞を受賞しました。

 

振動ブラシカー(リニア発電機つき)
 Brush-car 
with Linear Alternator   2002

 試験管を逆向きに立てました。ホルダー アームが上下に振動します。先端に取り付けた永久磁石の振動によって、コイルに交流が発生します。端子に接続したLEDを点灯しながら、 走行します。

右の写真は歯ブラシが持ち上がるように、スタンドを 下ろした状態。スターリング発電機として使用する時の状態です。加熱はアルコールランプやコンロ、バーナーライターなどで行います。

 

ジャンピング・スターリング Jumping-Stirling    2002

振動ブラシカーのアーム部分をはずして、転倒防止のアルミ板を付けたものです。上に 突き出ている試験管のおしりを加熱し、少し持ち上げて離すと、T字型の部分を支点として、ジャンプし始めます。ピョンピョンと跳ね続け、少し ずつ前に進みます。

大きく跳ね上がる時の周期は長く、小さな跳ね上がりの時の周期は短くなります。しか し、その動きに同期して、ディスプレーサピストンも振動しています。このような動きこそ、今までのフリーピストン・スターリングエンジンで不 可能だったわけです。

 

上のジャンピング・スターリングにタイヤ(ローラー)をつけました。確実に前進させ るため、車軸にラチェットギアを付けてみました。ストッパ(爪)は結束バンドを流用。

ピョン、ピョンとジャンプするごとにジー、ジーとラチェット音がして進みます。

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FPSE振動翼推進ボート

Stirling-Fish !     2002

図 面(組立図・部品図)

英語版図面→Plans and Parts list (in English)

 

 

実験室の流し(水槽)を進む振動翼ボート。振動による波が水面に見えます

前進速度は毎秒数十センチです。フロートやヒレの形などを最適化すれば、もっと高速 化するでしょう。

エンジンの放熱部から伸びてヒレの付け根部分まではアルミ板であり、水中に没した部 分が水によって冷却されます。水冷式です。(^^

 

 

2015 ブルブル君登場

最も小さな走るSECDです。振動する容器が床をキックして進みます。サイドスラストを考えると通常サイズではありえない設計 ですが、サイズ効果によって重力由来の摩擦仕事は比較的小さくなるので、こんなことが可能になります。
 右の画像の上がスターリングテクノラリーMMクラスのマイクロ賞の大会記録(三辺合計=70mm)を保持しています。
 右の下はそれより少し小さいのですが、スターリングテクノラリーでは公式コース1周回(約2m)を完走できていません。

ブルブル図面
ぶるぶる君 
ぶるぶる2号


おまけ情報

出力ピストン(ベローズ)のストロー クとシリンダ内のディスプレーサのストロークとの比が衝突のタイミングを決めます。振動式の場合ですが、計算によると、その比が1前後のとき、良いタイミング (位相角90度に相当)になります。

スチールウールの表面の密度はタワシ として売られているふんわりとした状態です。24mm〜30mm径の試験管であれば、中身のスチールウールは2〜3g程度でしょう。摩擦力が大きく動きが悪い 時はスチールウールの芯に重りを入れても良いでしょう。

ジャンピング式の場合、ディスプレー サ下部のばねが必要ですが、スチールウールの弾力を利用すれば、ばねを省略できます。ただ、その場合はスチールウールの弾力にたよることになるので、スチール ウールの巻き方や形状に気を使う必要があり、充分な調整が必要です。

 

 

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