No.69

LC
  arduinoで測る

 LC電気振動の観察

2020年12月掲載


arduino-scope

九州工業大学が提供する
arduinoPCオシロインターフェース
https://www.iizuka.kyutech.ac.jp/
faculty/physicalcomputing/pc_kitscope

 

 arduino簡易オシロスコープ
  ブラウン管式でも、液晶式でも、オシロの画面をスクリーンに表示させようとすると苦労します。もし音の波形を見せるだけなら、PC用のフリーソフトがいくつかあるので、便利なんですが、その場合PCのマイク端子からの入力なので、もちろん電圧を測ることができません。そして、直流分は表示できません。
 arduinoボードのアナログ入力ピンは0〜5Vの電圧を10ビットの解像度で取り込むことができるので、簡単な実験なら、AD変換器として使えます。標準機能のシリアルモニタで簡単に値を取得できます。その値を表計算ソフトに貼り付ければグラフ化できます。しかし、グラフ表示までの作業を自動化してオシロ画面のようにするには、PC側のソフトウェアの部分を自作する必要があります。

 その部分を九州工業大学情報工学部が提供してくれています。左図下のリンクには丁寧な図や説明があり、電子回路の初心者でも分かりやすいと思います。processing のインストールが必要ですが、その手順は難しくありません。


オシロ用arduino配線 arduinoまわりの配線
 
  arduinoピンには入力保護やトリガ用にコンデンサ1個、3個の抵抗など簡単な配線をします。
 提供されたスケッチ(コード)をarduinoボードに送り、processingを起動して、ダウンロードしたコードを実行すると、上の図の2CHオシロの画面が現れます。そしてオシロとしてちゃんと動作します。素晴らしい。
   

コンデンサーの放電 コンデンサーの放電カーブ
 
 10μFのコンデンサーを3Vで充電し、10kΩの抵抗に接続して放電させた時の電圧カーブを1chで見たのが、左の写真です。横は50ms×5=0.25sの変化をみています。10ビットなので、充分なめらなカーブが見えます。
 このような緩慢な変化の場合、マイク端子からのオーディオ信号を使うオシロソフトでは正確に見ることができません。また、電圧が測定できるのがオシロスコープです。
 ただし、この簡易オシロで小さい電圧を見る場合には、前段のリニアアンプが必要になります。ソフト上で参照電圧の設定を変えることができるので、画面上で上下に拡大表示をすることはできますが、arduinoアナログ入力ピンの0〜5Vで10ビット(0〜1023)の変換は変わらないので、拡大しても分解能約5mVはそのままです。

 
LC回路

電源トランス

LC電気振動

プルアップ

LC電気振動
 
 LC電気振動を見てみました。コイルは電源トランスの100V側、コンデンサーは耐圧50V 10μFと表示された電解コンデンサーを使って行いました。
 使用したコイルは、昔の真空管ラジオ用の電源トランス、と中村理化の水槽実験用AC6V電源を試しました。LCメーターで測定したところ、偶然、どちらも約1Hでした。現在のACアダプターは小型化・軽量化のためにスイッチング電源がほとんどですが、昔ながらのずしりとした電源トランスを使ったものでなくては、使えないと思います。
 電源装置の方は、分解せず、電源スイッチをONの状態で、電源プラグにクリップをつなげば良いです。コンデンサーは電解コンデンサーですが、耐圧50Vのコンデンサーに対して電源が3Vなので、危険はありません。ただし、充電時に極性を守った方がきれいな振動波形が見られました。

 この簡易オシロスコープはマイナス電位が表示できないので、乾電池とVRのプルアップ回路を直列に挿入して、オシロにつなぎます。(左下の回路図)

得られた波形

 真空管ラジオの電源トランスを使用し,充電電圧は3.0V,約2Vプルアップし,水平1目盛りが20ms の画面で次の波形が観察できました。波形用にした1chそのものをトリガーにしたので、0sの0Vは捉えられていませんが、5〜6回の減衰振動がきれいに見えました。
LC電気振動(波四電源トランス)

starコンテンサーの表示容量はかなり誤差があるのですが、1.1H,10μFのLC回路の振動周期は21msと計算されるので、測定値とほぼ一致しました。

star蛍光灯の安定器はせいぜい数十mHなのでテストしていません。使用した真空管ラジオ用の電源トランスには「並四用」という文字があります。そうすると、遅くとも5球スーパーに使われたものです。昭和の遺物が役に立ちました。一方の実験装置用の交流電源でも、ほとんど同じ波形が得られました。そっちなら、まだまだ残っている学校も多いのではないかと思います。

star放電用のスイッチは手元にあったタクトスイッチを使ってしまいましたが、2回に1回ぐらいは接触不良で波形がくずれます。もっとしっかりしたバネのついたスイッチの使用をおすすめします。

 

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